コラム
【借主向け】立ち退き交渉を弁護士に依頼するメリット・デメリット
賃貸人(大家・地主)から賃貸物件や借地からの立ち退きを求められた場合、賃貸人(大家・地主)と賃借人(入居者)との間での条件などについて交渉が行われることがあります。入居者が自身に有利に交渉を進めるためには、法的な知識や交渉の技術が必須です。
そのため、立ち退き交渉は自身で行うのではなく、弁護士に依頼することを検討する必要があります。
では、弁護士に依頼することで、賃借人はどのようなメリットを得られるのでしょうか。またデメリットはあるのでしょうか。
今回は立ち退き交渉を弁護士に依頼するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
立ち退き交渉を弁護士に依頼するメリット
立ち退き交渉を弁護士に依頼することで、賃借人である入居者には次のようなメリットがあります。
・交渉の負担を軽減できる
・早期に解決できる
・賃貸人の主張する理由が正当事由に該当するかを正しく判断できる
・適切な立ち退き料の水準をふまえた交渉ができる
・立ち退き料以外の交渉もできる
上記のメリットについて詳しくご説明しましょう。
メリット1 交渉の負担を軽減できる
立ち退き交渉を自分で行おうとすると、賃借人には負担がかかります。その負担は、体力的にも精神的にも決して小さなものではないでしょう。負担を抱えながら合意までの日々を過ごすとなると、賃借人の日常生活に支障をきたすかもしれません。
しかし、交渉を弁護士に依頼すれば、この負担は軽減されます。賃借人自身が情報を集めたり、賃貸人を説得したりする必要はありません。専門家のサポートを受けることによる安心感も得られるでしょう。
なるべく自身の負担を軽減するためには、立ち退き請求を受けたらまず弁護士に相談することが大切です。
メリット2 早期に解決できる
弁護士に代理交渉を依頼することで、早期解決を目指すことができます。
立ち退き交渉を賃借人や賃貸人だけで行うと、交渉をうまくまとめられなかったり、立ち退き料の額が決まらなかったりして、交渉が長期化してしまう可能性があります。交渉の長期化は、双方にとって負担となるでしょう。
弁護士が交渉を担えば、交渉はスムーズに進み、賃借人・賃貸人の時間的負担は軽減されます。
弁護士は、事案に応じて適切な立ち退き料の目安や交渉の流れを把握しているため、着地点を見据えて効率的に交渉をまとめることができるのです。
このように、問題の早期解決を目指せることも、弁護士に立ち退き交渉を依頼するメリットのひとつです。
ただし、貸主との交渉の結果、早期解決よりもより高額な立ち退き料の獲得を優先すべき場合には、あえて長い目で見て交渉を継続すべき場合もあります。
メリット3 賃貸人の主張する理由が正当事由に該当するかを正しく判断できる
借地借家法第28条では、賃貸人が賃貸借契約の解約を申し入れるにあたっては、「正当の事由」が必要とされています。つまり、大家や地主が賃借人に立ち退きを請求するには、「正当の事由」と認められる理由が必要なのです。
しかし、提示された理由が「正当の事由」にあたるかどうかの判断を一般の方が正しく行うのは困難です。
この判断を助けてもらえるのも、弁護士に依頼するメリットのひとつでしょう。弁護士に依頼すれば、法的な知識や経験から「正当の事由」やその強弱を正しく判断の上、適切な条件を提示することができます。
メリット4 適切な立ち退き料の水準をふまえた交渉ができる
支払われる立ち退き料の金額は、個別具体的な事情に左右されるため、ケースによって異なります。この金額の決定に影響を与えるのが、前述した「正当の事由」です。
借地借家法第28条では、財産上の給付、すなわち立ち退き料の支払いが「正当の事由」を補完する役割を果たすことが記されています。
よって、賃貸人の主張する立ち退き請求の理由が「正当の事由」として強いものであれば立ち退き料の金額は低くなり、立ち退き請求の理由が「正当の事由」として弱いものであれば立ち退き料の金額は高くなる傾向にあります。
このような関係性があることから、賃借人が適切な立ち退き料を受け取るためには、「正当の事由」の有無やその内容を踏まえた強弱の判断が非常に重要です。
さらに、立ち退き料の金額は物件の立地や築年数、使用状況などにも影響を受けるため、適切な金額を見極めるには知識や経験も必要です。
弁護士は法的知識や経験を基に「正当の事由」を判断し、その他の要素も踏まえ、事案に応じた適切な立ち退き料の金額を算出し、提示することができます。つまり弁護士に依頼すれば、賃借人は適切な立ち退き料の水準をふまえた交渉を行うことが可能になるのです。
メリット5 立ち退き料以外の交渉もできる
弁護士は立ち退き料以外の交渉も担います。例えば、立ち退きの時期や立ち退き料支払いのタイミング、明渡しの方法、立ち退きに伴う残置物の取扱いや敷金の返還などです。弁護士の交渉により、賃借人は立ち退きに伴うさまざまな条件を、自身の希望に沿った形で提示することができます。
立ち退きにおいては立ち退き料にばかり目がいきがちですが、他の部分でも思わぬ形で損をすることのないよう気をつける必要があります。弁護士に依頼すれば、立ち退き料以外の交渉も総合的にサポートしてもらうことが可能です。
立ち退き交渉を弁護士に依頼するデメリット
立ち退き交渉の代行を弁護士に依頼するにあたっては、次のデメリットが生じることも理解しておく必要があります。
・弁護士費用がかかる
・賃貸人の態度が硬化する可能性がある
詳しくみていきましょう。
デメリット1 弁護士費用がかかる
弁護士に依頼するには費用がかかります。依頼者は弁護士のサポートを受ける代わりに、着手金や成功報酬などを支払わなければなりません。
もちろん弁護士に依頼することで、入居者自身で交渉する場合よりも有利な内容での解決を目指すことが期待できますが、弁護士費用の金額は依頼する弁護士や案件の内容によって異なります。具体的な金額については、依頼の前に明確な見積もりを取って、よく確認するようにしましょう。
デメリット2 賃貸人の態度が硬化する可能性がある
弁護士への依頼は、交渉をスムーズかつ有利に進めるのに効果的です。
しかしその一方で、賃貸人によっては、弁護士に依頼したことを知って態度を硬化させてしまうことも考えられます。
もっとも、賃貸人が態度を硬化させるのは、弁護士を介した交渉が手強いと感じるからであって、硬化させることが具体的に問題となることはあまりありません。また賃貸人の態度が硬化した場合でも、弁護士の有する法的な知識や交渉の技術を生かして、適切な交渉を行うことが期待できます。
立ち退き交渉を弁護士に依頼する費用
立ち退き交渉を弁護士に依頼するには、費用がかかります。主な費用の内訳は、次の4項目です。
・相談料
・着手金
・成功報酬
・実費
それぞれどれくらいの費用がかかるのか、内訳ごとの目安をご紹介します。
1 相談料
弁護士に法律相談をする際には、相談料がかかります。
相談料の目安は、30分で5,000〜10,000円ほどです。事務所によっては無料相談を設けている場合もあります。このサイトを運営するエジソン法律事務所では、立ち退きに関する相談を初回60分無料でお受けしております。
2 着手金
弁護士に正式に依頼を行った場合には、着手金の支払いが必要になります。
着手金の金額は法律事務所によって異なります。定額、もしくは問題解決により依頼者が得た利益の割合を決めることが多いです。
中には着手金不要の事務所もあるので、依頼の前に必ず確認しておきましょう。
なおこの着手金は、依頼した案件が思うように解決できなかったとしても返却されることはありません。
エジソン法律事務所では、こちらの着手金も無料でお受けしております。
3 成功報酬
案件が解決した際には、依頼者は成功報酬を支払うことになります。この金額は、問題解決により依頼者が得た利益の割合から決められるのが通常です。
請求される割合は法律事務所によって異なります。エジソン法律事務所では、立ち退き料の増額幅に対し35%+税(上限)の金額を、成功報酬として頂いております。(2024年9月現在)
4 実費
案件の解決に要した実費も、依頼者負担となります。事務手数料という名目で、実際の実費に関係なく一定額の支払が必要な事務所もあります。例えば、交通費や切手・印紙代、書類の印刷代などが該当します。
立ち退き交渉の流れ
立ち退き交渉の大まかな流れは次の通りです。
1, 立ち退き請求の理由の説明を受ける
2, 立ち退きの条件に関する交渉を行う
3, 条件に合意できたら退去手続きを進める
賃貸人から立ち退き請求を受けたら、まずはその理由の説明を受けます。賃借人や弁護士は、この時説明された理由をもとに「正当の事由」の有無や程度を判断し、貸主側と効果的な交渉をすることになります。
その後立ち退き料の金額や立ち退きの時期などについて交渉を行い、合意を目指します。
合意できたら退去手続きを進めることになりますが、合意内容は必ず書面で残しておくようにしましょう。口約束だけの合意は後からトラブルに発展する恐れがあるのでご注意ください。
立ち退き交渉を依頼する弁護士の選び方
立ち退き交渉を依頼する弁護士を選ぶ際には、次の3点に注意するようにしましょう。
1, 立ち退き事案の実績が豊富である
2, 弁護士の対応に好感を持てる
3, 費用について明確に説明してくれる
上記は、問題を納得のいく内容で解決するために重要なポイントです。各ポイントについて詳しくご説明します。
ポイント1 立ち退き事案の実績が豊富である
弁護士はさまざまな分野のトラブルに対応しますが、それぞれ得意分野は異なります。企業法務を得意とする場合もあれば、刑事事件を得意とする弁護士もいるでしょう。
問題をスムーズかつ有利に解決するためには、解決したい問題の分野を得意とする弁護士に依頼する必要があります。
立ち退き問題を解決したいのであれば、不動産トラブルを得意とし、実績も豊富な弁護士を選ぶべきでしょう。
得意分野や実績については、法律事務所のWebサイトに掲載されていることが多いので、相談前に確認するとよいでしょう。
ポイント2 弁護士の対応に好感を持てる
依頼する弁護士は、対応にも注意して選ぶ必要があります。
法律事務所の中には弁護士が直接対応をせず、主に事務員が対応するところがありますが、直接弁護士が対応してくれるかはとても重要です。
また仮に弁護士が対応するとして、その弁護士にいくら経験や知識があったとしても、対応に問題がある場合、問題を円満に解決することは難しくなります。依頼者自身の疑問が解消できなかったり、交渉相手の賃貸人をかえって強硬にしてしまったりすることもあるかもしれません。
これを避けるためには、相談時の弁護士の態度をよく見極めることが大切です。親身になって話を聞いてくれているか、誠意を持って対応してくれているか、質問に対して的確に回答してくれているか、相談して自分にとっての新たな発見があるかなどをよく確認し、その人柄を適切に判断しましょう。
ポイント3 費用について明確に説明してくれる
弁護士に依頼する際には、弁護士費用がかかります。この費用の金額や内訳について明確に説明してくれるかどうかも、弁護士選びの重要なポイントです。
費用の説明が曖昧だったり、細かな内訳を教えてくれなかったりする場合、後から思いもよらない金額を請求される可能性もあります。費用のトラブルを避けるためにも、事例を挙げるなどして費用詳細を依頼前に明確に提示してくれる弁護士に依頼するようにしましょう。
まとめ
賃貸人との立ち退き交渉を弁護士に依頼することで、賃借人は多くのメリットを得ることができます。弁護士に依頼することで、賃借人に有利な内容での早期解決を目指すことができることはもちろんのこと、精神的な支えとしても大きく役立つでしょう。
ただし、弁護士に依頼するには費用がかかります。この費用は事務所や案件の内容によって大きく異なるので、依頼前にできるだけ明確な見積もりを提示してもらうようにしてください。
また、問題を納得いく形で解決するには、弁護士選びが重要です。依頼時には、実績だけでなく、対応力や人柄の面でも信頼できる弁護士を選ぶようにしましょう。
エジソン法律事務所は、立ち退き交渉の実績が豊富な法律事務所です。
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記事監修 : 代表弁護士 大達 一賢