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立ち退き交渉は代行を依頼した方がいい?弁護士が代行するメリット等も解説

コラム/[更新日]2024年10月9日

立ち退き交渉は代行を依頼した方がいい?弁護士が代行するメリット等も解説

建物の大家から立ち退きを求められた際、大家(賃貸人)と入居者(賃借人)との間で、立ち退き交渉が行われることがあります。この交渉は、立ち退きにあたって入居者が十分な補償を得るために重要な手続きです。

しかし、交渉を入居者自身が行うことは、あまりおすすめしません。立ち退き交渉は、弁護士への依頼を検討したほうがよいでしょう。
それは何故なのでしょうか。

今回は、立ち退き交渉を弁護士に依頼すべき理由についてわかりやすく解説します。

 

 

立ち退き交渉を代行できるのは弁護士のみ

弁護士法第72条は弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、法律事件に関する法律事務を業として行うことを禁止しています。
そのため、大家から立ち退きを求められた際に、入居者の代理人として立ち退き交渉を代行できるのは、基本的に入居者が依頼した弁護士のみです。

賃貸物件を管理している管理会社や不動産会社、その他弁護士資格を有しない者による交渉の代理は認められておらず、もしこれらの会社が交渉を行った場合には、弁護士法で禁止される非弁行為に該当するとして、刑事罰の対象となる可能性があります。

つまり、立ち退き交渉を行う方法は、「入居者が自身で行うか」「弁護士に依頼するか」の二択ということになります。

立ち退き交渉で十分な補償を得るには、法律に関する知識と高い交渉技術が必要です。そのため、入居者自身による交渉はハードルが高く、思うように交渉を進められないリスクもあります。
弁護士に交渉の代行を依頼すれば、このリスクは低減され、また入居者は複数のメリットを得ることができます。このメリットについては、次章で詳しくご紹介しましょう。

 

 

弁護士に立ち退き交渉を代行してもらうメリット

弁護士に立ち退き交渉を代行してもらうことで、入居者は次のメリットを得ることができます。

・事案に応じた「正当の事由」の有無や程度をふまえた交渉ができる
・足元を見られずに立ち退き料の交渉ができる
・交渉の負担を軽減できる

上記メリットについて詳しくみていきましょう。

 

メリット1 事案に応じた「正当の事由」の有無や程度をふまえた交渉ができる

借地借家法第28条においては、大家が入居者に立ち退きを求める際には、「正当の事由」が必要であると定められています。
「正当の事由」の有無は、大家や入居者が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の利用状況や建物の現況等の具体的事情をふまえて判断されます。

また、借地借家法第28条では、「正当の事由」の有無の判断に際して、「財産上の給付」の有無が考慮されることも示されています。つまり「財産上の給付=立ち退き料」が立ち退きの「正当の事由」を補完する役割を果たすのです。
このことから、「正当の事由」が強ければ立ち退き料は少なく、「正当の事由」が弱ければ立ち退き料は多くなる傾向があります。
しかし、事案に応じた「正当の事由」の有無や強弱を判断するのは、簡単なことではありません。ましてや、法律の知識や立ち退き交渉の経験がない入居者がこの判断を行うのは困難です。中には、判断を誤って、十分な額ではない大家からの提案を受け入れてしまうこともあるでしょう。

弁護士に交渉を依頼すれば、このリスクを避けることができます。特に不動産問題の経験豊富な弁護士であれば、「正当の事由」の有無や程度を適切に判断し、適切な立ち退き料の水準を見据えた交渉を行うことが可能になるでしょう。

 

メリット2 足元を見られずに立ち退き料の交渉ができる

入居者本人による立ち退き交渉は、大家側に足元を見られてしまう可能性があります。大家側には不動産業者など専門業者がついていることが少なくなく、入居者が立ち退くことを前提とした交渉を始めた時点での入居者の様子を踏まえ、大家には「この入居者は立ち退き料を多少調整すれば立ち退くだろう」という考えが生まれることがあるためです。
入居者が立ち退き自体を強く拒否しているケースと異なり、当初から立ち退きに応じる意志を見せているケースでは、充分な立ち退き料の支払いが見込めない可能性が高くなります。

しかし、弁護士が交渉を代行すれば、このような大家の考えを打ち消すことができます。
弁護士は事案に応じて大家と入居者の置かれた状況を整理し、大家側の心理を理解した上で、入居者側に不利益が生じないよう交渉を進めることができます。

このように、法律の専門家である弁護士が交渉を行うことで、より入居者に有利な内容での解決を目指すことができます。

 

メリット3 交渉の負担を軽減できる

立ち退き交渉に慣れているという入居者はほとんどいません。
慣れていない立ち退き交渉を自身で行うとなると、精神的にも体力的にも入居者の負担は大きなものになります。交渉期間の不安やストレスは大きく、これが誤った判断に繋がる可能性も否定できません。

弁護士による交渉は、この負担の軽減にも効果的です。弁護士に交渉を依頼することで、入居者の負担は軽くなり、また強力な味方を得ることで、弁護士と一体となって大家側との交渉に臨んだ結果、納得のいく内容での早期解決を目指すことも可能になるでしょう。

 

 

弁護士が立ち退き交渉を代行するデメリット

今回ご紹介したように、弁護士に立ち退き交渉を依頼することには複数のメリットがあります。ただその一方で、次のようなデメリットが発生することも理解しておかなければなりません。

大家との関係が悪化する可能性がある
弁護士費用がかかる

それぞれどのようなデメリットなのか解説していきます。

 

デメリット1 大家との関係が悪化する可能性がある

立ち退き交渉を弁護士に依頼することで、敵対意識を持つ大家は少なくありません。これにより、今まで築いてきた良好な関係が崩れてしまうことも考えられます。

しかし、大家都合による立ち退きに応じるにあたり、入居者としては十分な補償を受けることが合理的であり、適切な水準の立ち退き料の支払いを受けるために弁護士に交渉を依頼することに何ら問題はありません。また、「良好な関係」についても、大家側都合で生活の本拠を奪われることになりかねない入居者にとって守るべきものなのか、という考え方もあり得ます。

 

デメリット2 弁護士費用がかかる

弁護士に交渉を依頼するには、弁護士費用がかかります。
もちろん、弁護士に交渉を依頼することで、自身で交渉を行う場合よりもより有利な内容での解決を目指すことが可能となりますが、具体的な料金は法律事務所によって大きく異なるため、最初の相談時にはその金額をよく確認し、納得してから依頼するようにしましょう。

立ち退き交渉における弁護士費用の相場については、次章でご説明します。

 

 

立ち退き交渉の代行を弁護士に依頼する費用

立ち退き交渉の代行を依頼した場合には、弁護士費用が発生します。この弁護士費用は、次の4つの項目から成るのが一般的です。

相談料

法律相談にかかる費用のことを指します。
30分5,000〜10,000円程度が相場ですが、初回無料の事務所もあります。

 

着手金

案件の着手にかかる費用定額、または経済的利益のパーセンテージで決定されることが多い

 

成功報酬

案件の処理が終了した場合に支払う費用
経済的利益のパーセンテージで決定されることが多い

 

その他実費

案件の処理にあたって要した費用
交通費や印紙代、切手代など

 

これらの費用は法律事務所や案件の内容によって大きく異なりますので、契約前にしっかり確認しておくことが大切です。

 

 

立ち退き交渉の流れ

立ち退き交渉は、次のような流れで進められます。

①立ち退き請求の通知
②説明会の実施(当初から個別の交渉となることもあります)
③交渉の開始
④裁判(交渉決裂の場合)
⑤立ち退きの実施(交渉結果・裁判上の和解・判決に応じて)

賃貸物件からの立ち退きでは、まず大家から立ち退き請求の通知が行われ、住戸数が多いような場合には、入居者に対する説明会が実施されることもあります。
この説明会では、立ち退きの理由や期限などが提示されるのが通常です。立ち退き料については、説明会で提示されるケースや、その後の個別の交渉で提示されるケースがあるようです。
なお、大家側から提示される立ち退き請求の理由は、適切な立ち退き料の金額を判断する重要な要素となるので、しっかり確認し、できれば書面でもらうようにしましょう。

その後、個別に交渉が行われ、立ち退き料の金額や立ち退き条件を擦り合わせていくことになります。
この交渉では、入居者が大家の提案をすぐに受け入れてしまうことが多いですが、十分な補償を受けるためにも即答は避け、内容が妥当なものかどうか弁護士に相談すると良いでしょう。

交渉が決裂した場合には、大家側から調停や裁判が起こされることもあります。

交渉がまとまったら、または裁判の判決が出たら、その内容に従って立ち退きや立ち退き料の支払いが行われます。裁判や交渉の結果によっては、入居者が立ち退かず、そのまま住み続けるケースもあります。

 

 

立ち退き交渉を成功させるポイント

最後に、立ち退き交渉を成功させるために重要なポイントをご紹介します。
気をつけたいポイントは以下の3つです。

・感情的にならない
・賃貸借契約違反をしない
・弁護士に交渉を依頼する

各ポイントについて詳しくご説明します。

 

ポイント1 感情的にならない

大家から急に立ち退きを求められた際には、驚いたり腹が立ったりする人が多いでしょう。自宅から出ていくことを要求されているわけですから、それも無理はありません。
しかし、ここで感情的になってしまっては、大家との関係が悪くなり、その後の交渉に支障をきたします。

大家からは立ち退きの理由や時期、条件など必要な情報を聞き出し、交渉に向け冷静に対応するようにしましょう。

 

ポイント2 賃貸借契約違反をしない

家賃の滞納や無断での又貸しなど、入居者に賃貸借契約違反がある場合は、立ち退き料が少なくなるどころか、全く受け取れなくなる可能性があります。

例えば、立ち退き請求に応じたくない気持ちを大家に示したいなどの理由で家賃を支払わないのは全くの逆効果です。賃貸借契約に違反することで、大家側からの債務不履行を理由とする賃貸借契約の解除が可能となるおそれがありますので、家賃の滞納等の事態が生じないようくれぐれもご注意ください。

 

ポイント3 弁護士に交渉を依頼する

前述の通り、入居者が自ら大家との間で立ち退き交渉を行うのは困難です。十分な立ち退き料を得るためにも、また精神的・体力的な負担を避けるためにも、弁護士に立ち退き交渉を依頼することを検討しましょう。

また、弁護士には得意分野があります。立ち退き交渉を依頼するのであれば、不動産問題を得意とする弁護士を選びましょう。
弁護士の得意分野については、その事務所のホームページや相談時の対応を確認してから判断すると良いでしょう。

 

 

まとめ

賃貸物件からの立ち退きにあたって十分な立ち退き料を得るためには、大家との間で適切な交渉を行うことが必須となります。
ただし、交渉を有利かつ円滑に進めるには、知識と技術が必要です。また、交渉によって受ける入居者の精神的な負担も小さなものではありません。

これらは、弁護士に立ち退き交渉を代行してもらうことで解決できます。弁護士に交渉を依頼することで、早期解決および入居者に有利な内容での解決を目指すことが可能になるでしょう。

大家から立ち退きを請求された際には、まず不動産問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

記事監修 : 代表弁護士 大達 一賢