コラム
再開発による持ち家からの立ち退き|拒否できるのかも解説

再開発とは、より良いまちづくりのために、既にある市街地を取り壊し、その跡地に機能的で居住性の高い街を再整備する公共工事のことを指します。
再開発が決定した場合、施工者である行政は、対象の地域に住んでいる住民に対し、その場所からの立ち退きを求めます。
しかし、「その場所に一軒家を構えている」「慣れた土地から離れたくない」などの理由で、立ち退きを受け入れられない人もいるでしょう。
では、再開発による立ち退き要請を受けた住民には、その後の対応にどのような選択肢があるのでしょうか。また、立ち退きを拒否することはできるのでしょうか。
今回は、再開発による持ち家からの立ち退きについて、詳しく解説します。
再開発による立ち退きを要請された場合の2つの選択肢
再開発を理由に立ち退きを求められた住民には、次の2つの選択肢があります。
・権利変換を行う
・立ち退き料を受け取り立ち退く
まずは、上記の選択肢の内容について詳しく見ていきます。
1 権利変換を行う
再開発にあたって、住民が現在保有している建物や土地の権利を、再開発で建てられる建物の床・土地の権利と交換することを、「権利変換」と呼びます。
権利変換を選択した場合、住民は再開発工事のために一度はその土地を立ち退くものの、工事完了後には再度そこに戻ってきて、再開発で建てられた物件などに入居することができます。「この土地から離れたくない」と考えている方は、この方法を選択するケースも多いです
変換される権利の組み合わせ
権利変換では、住民が保有する権利の種類によって、交換される権利が異なります。保有する権利と交換される権利の組み合わせは、次のとおりです。
・土地・建物の所有権または借地権→再開発で建てられた物件の床または敷地の一部を保有する権利
・借家権→ 再開発で建てられた物件の床の一部についての借家権を保有する権利
・担保権→ 再開発以前と同等の権利
この権利交換において、再開発後に与えられる権利は、再開発前に所有していた権利と同等のものになります。そのため、再開発前に所有していた物件よりも極端に価値の低い部屋、または高い部屋が再開発後に与えられるようなことはありません。
また、この時交換される権利の大きさについては、再開発前後の土地や建物の資産額をもとに、評価・決定されます。
この評価の基準日は、事業計画認可の公告があった日から31日目です。もしその後、半年以上権利変換の手続きが行われなかった場合には、6ヶ月+31日目が新たな基準日となります。
2 立ち退き料を受け取り立ち退く
もうひとつの選択肢として挙げられるのが、その場所からの立ち退きの受け入れです。この場合、住民は行政側から立ち退き料を受け取り、その代わりに住んでいた建物・土地を手放し、退去することになります。
この選択肢を選ぶ場合に気をつけたいのが、権利変換と異なり、再開発後の権利を得ることはできないということです。
「その土地から出てもいい」と考えている方は、立ち退き料を受け取って立ち退く方法を選ぶことが多いでしょう。
立ち退き料に決まった金額はない
立ち退きで受け取る立ち退き料には、法定の金額や計算方法がありません。支払われる金額はケースによって異なり、その金額には交渉が大きな影響を与えます。
よって、立ち退き料を受け取って立ち退く場合に、十分な金額の立ち退き料を得るには、施工者である行政と必ず交渉を行うようにしましょう。また、交渉を有利に進めるためには、弁護士による代理交渉を検討するのも良いでしょう。
立ち退き料とは
立ち退き料とは、立ち退き要請を行う側(行政、大家など)が要請を受け入れた側(住民)に対して支払う金銭のことを指します。この金銭は、立ち退きによって住民が被る損失に対する補償の意味を持ちます。
立ち退き料の支払いには、実は法的な定めはありません。それにも関わらず多くの立ち退き案件で立ち退き料が支払われるのは、立ち退きの正当性を高めるためでしょう。
立ち退き料は立ち退き理由の正当性を補完する
建物や土地の賃貸借について定めている借地借家法第28条には、次のことが記載されています。
・立ち退き要請を行うには正当の事由が必要である
・財産上の給付(立ち退き料の支払い)は正当の事由を補完することができる
つまり、立ち退き料を支払うことで立ち退きの正当性は補完され、立ち退き要請が認められやすくなるのです。
このことから、行政や大家から住民に対する立ち退き料の支払いは、法に基づいた合理的なものだと言えます。
立ち退き料の内訳と相場
持ち家からの立ち退きで支払われる立ち退き料を算出するに当たり、次のような項目が考慮要素となります。
・土地の売買費用
・建物の解体・移転費用
・建物の建設費用
・引越し費用
・一時的に住む住居費用
また、立ち退き料の金額はケースによって大きく異なるため、明確な相場がありません。
持ち家からの立ち退きであれば、そのエリアの公示価格や基準価格から土地の売買費用を割り出したり、解体するものと同じ条件で建物を再建築する際に必要な建築費を算出したりして、具体的な支払い金額を決定していきます。
再開発による立ち退きの場合「都市計画補償金」も受け取れる
再開発のために立ち退きを要請された場合に、住民が受け取れるのは立ち退き料だけではありません。万が一立ち退き料が支払われなくても、住民は「都市計画補償金」を受け取ることが可能です。
「都市計画補償金」とは、都市計画に際して、行政が私人である土地所有者(住民)に対し、その土地の所有権を消滅させる(収用する)ことへの補償として支払う金銭のことを指します。
都市計画によって私人が被る損失は、行政に補償義務があると都市計画法によって定められています。この補償手段が、都市計画補償金の支払いです。
前述のとおり、立ち退き料の支払いは法的に定められたものではなく、立ち退く住民にはそれを受け取れないリスクがあります。
しかし、都市計画補償金の支払いは法律で定められたものです。立ち退き料と違って住民は必ず受け取ることが可能です。
都市計画補償金を受け取る場合には、住民は収用委員会を相手に申請手続きを進めます。
また、この補償金については、国土交通省による『公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱』において算出基準が定められており、具体的な金額はこの要綱に従って算出することになります。
再開発による立ち退き要請は拒否できるのか
大家都合による賃貸物件からの立ち退き要請の場合、正当の事由がなければ、住民は立ち退きを拒否することができます。
しかし、再開発の場合、住民が立ち退きを拒否することは基本的にできません。なぜなら、都市計画法に基づく再開発では、最終的に行政側による強制での土地収用が可能になるためです。
都市計画法では、次のことが定められています。
・再開発事業に際して工事の必要がある場合には、施行地区内の土地や建物を占有者に対して、期限を定めて、土地の明渡しを求めることができる。またその占有者は、期限までに施行者に土地を引き渡す、または物件の移転・除却をしなければならない。(※補償金が支払われる場合)
・占有者が期限までに土地や物件の引き渡しに応じない場合、行政側は行政代執行法に基づき、強制的に土地や物件を収用することができる
つまり、再開発による立ち退き要請を住民が拒否したとしても、行政は立ち退きを強制的に執行することができるのです。
よって、再開発による立ち退きでは、ただ立ち退きを拒否することよりも、立ち退きにあたってより良い条件を引き出すために交渉することの方が現実的であり、その後の生活を踏まえた重要性も高いと考えられます。
立ち退き交渉のポイント
ここまでご紹介してきたとおり、再開発による立ち退きで納得のいく条件を引き出すには、立ち退き交渉が重要です。
交渉を成功させるためには、次の2つのポイントを重視するようにしましょう。
・すぐには立ち退きに同意しない
・弁護士に交渉を依頼する
ここでは、上記の各ポイントについて詳しくご説明します。
ポイント1 すぐには立ち退きに同意しない
再開発による立ち退きを要請された場合には、すぐに賛同するのではなく、要請を拒否する姿勢を見せることが大切です。すぐに賛同してしまうと、その住民にとって「そこに住む必要性」は高くないと判断されるおそれがあります。
十分な金額の立ち退き料を受け取るためには、一旦は立ち退きに前向きでないことを示し、「そこに住む必要性」を主張する必要があります。
ただし、行政代執行が行われ得る状態まで拒否を続けるのはおすすめしません。行政による立ち退きの強制執行により、住民が損失を被る恐れがあるためです。
ポイント2 弁護士に交渉を依頼する
再開発による立ち退きの要請を受けた時には、不動産問題を取り扱う弁護士への依頼も検討するようにしてください。
立ち退きにあたっての行政側との交渉を成功させるには、法律の知識や高い交渉技術が必要です。
しかし、専門家でない一般の方がこの交渉を有利に進めるのは困難です。その方が負う精神的・体力的な負担も大きくなってしまうでしょう。
弁護士に依頼すれば、これらの課題を解決し、円滑かつ有利に交渉を進めることができます。場合によっては、立ち退き料の増額を図ることも可能でしょう。
弁護士による代理交渉は、住民自身の負担を減らしつつ、十分な補償を受けるために有効です。
まとめ
再開発事業による立ち退き要請を受けた住民に与えられる選択肢は、「権利変換」と「立ち退き」の2つです。
権利変換を選んだ場合、住民は再開発後の土地や建物を取得することができますが、立ち退きを選んだ住民は再開発が終わっても同じ場所に帰ってくることはできません。よって、その場所に住み続けたいかどうかで、選ぶべき対応は変わります。
また、立ち退きを選んだ住民は立ち退き料を受け取ることになりますが、十分な立ち退き料を得るためには、交渉が非常に重要な役割を果たします。うまく交渉を進めることができれば、立ち退き料を増額してもらうことも可能でしょう。
再開発をはじめとした立ち退き要請を受けた場合には、一度弁護士にご相談ください。弁護士に依頼することで、住民は交渉を有利に進め、より良い条件で立ち退くことが可能になります。
記事監修 : 代表弁護士 大達 一賢