コラム

  • TOP > 
  • コラム > 
  • 大家の死亡に伴い立ち退き請求された!退去...

大家の死亡に伴い立ち退き請求された!退去の義務や立ち退き料の「相場」について解説

コラム/[更新日]2024年12月3日

大家の死亡に伴い立ち退き請求された!退去の義務や立ち退き料の「相場」について解説

賃貸物件に住む入居者は、建物の老朽化や大家の自己使用など様々な理由で賃貸人から立ち退きを求められる可能性があります。よくあるケースとしては、「住んでいるアパートの大家が死亡したため、その親族から立ち退きを求められている」というものです。
では、大家の死亡を理由に賃貸物件からの立ち退きを求めることは、法的に可能なのでしょうか。

今回は、大家の死亡を理由にした立ち退き要求の法的有効性について、立ち退き料の相場や立ち退き交渉のポイントとともに、わかりやすく解説します。

 

 

大家の死亡後に入居者が立ち退く義務はない

結論から述べると、大家の死亡だけを理由に入居者に立ち退きを求めることは、基本的に認められません。なぜなら、大家が死亡しても、賃貸人(大家)と賃借人(入居者)間の賃貸借契約は継続されるからです。
賃貸借契約が継続されているので、入居者がその物件から退去する必要はありません。

賃貸人が死亡した場合、その地位は賃貸人の相続人に引き継がれることになります。例えば、大家が亡くなってその娘が相続人となるのであれば、大家の立場も娘に引き継がれるのです。
(複数人の相続人がいる場合、遺産分割が行われるまでは、相続人全員が大家の立場を一時的に引き継ぐことになります。)
したがって大家が亡くなった後には、入居者は大家の相続人と賃貸借契約を結んでいる形になります。

ただし大家が死亡した後で、相続人が入居者に立ち退きを求めることはよくあります。つまり大家死亡後のタイミングで、「老朽化による賃貸借契約の解約」「定期借家契約(期限付きの契約)へ切替」などの手紙が、突然送られてくるのです。

 

立ち退きには正当事由が必要

賃貸人が賃借人に立ち退きを求めるためには、「正当事由」が必要です。正当事由とは簡単に言うと、貸主・借主のそれぞれが建物を必要とする理由やその他の事情のことを指します。このことは、借地借家法第28条で以下のように定められています。

建物の賃貸人による更新拒絶の通知または建物の賃貸借の解約の申入れは、(中略)正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
(参考:e-Gov法令検索『借地借家法第28条 建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件』)

借地借家法は、立場が弱くなりやすい賃借人の権利に重きを置いた法律で、この条文も賃借人の権利を守るために存在するものです。賃借人が賃貸人の勝手な都合によって物件から追い出されるようなことがないのは、28条が存在するからです。

賃貸人の主張に「正当事由」が認められる場合には、賃借人は求めに応じ、物件から立ち退かなければなりません。

 

 

正当事由の5つの要素

立ち退き要求には「正当事由」が必要ですが、賃貸人の主張や状況が「正当事由に該当するかどうか」は、どのような基準で判断されるのでしょうか。

借地借家法第28条は、「正当の事由」を次の5つの要素から判断すると定めています。

・建物を必要とする事情
・従前の経過
・建物の利用状況
・建物の現況
・立ち退き料

ここからは、上記それぞれの要素について詳しくみていきましょう。

 

 

建物を必要とする事情

「正当事由」の判断要素として最も重要なのが、「建物を必要とする事情」です。
ここでは賃貸人と賃借人、両者の事情が考慮されます。それぞれの必要性を比較し、立ち退きに正当性はあるのか判断されるのです。

賃貸人の立場における事情としては、次のようなことが考えられます。

・老朽化が進んできているので、建物を建て替えたい
・経済的に困窮し住まいの確保が困難であるため、貸している部屋を自分で使いたい
・賃貸経営を続けるのが難しく、廃業したい など

一方の賃借人の立場における事情としては、次のようなことが考えられます。

・長年住んできた家を立ち退けば、生活の基盤を失ってしまう
・病気や年齢により、立ち退きが困難である など

上記のように、賃借人側の事情も考慮されます。

前述のとおり、立ち退きについて定める借地借家法は、賃借人の権利保護に重きを置いた法律です。従って賃貸人が「老朽化」などと理由をつけて立ち退きを迫っても、裁判で賃貸人側の事情だけが考慮されるようなことはありません。

 

従前の経過

「従前の経過」も、「正当事由」を判断する要素の一つです。
「従前の経過」とは、物件の賃貸借における賃貸人・賃借人の間でのやり取りや経緯のこと。具体的には、以下のようなものが該当します。

・契約期間の長さ
・契約内容とその変更の有無
・更新の有無
・家賃の支払い状況
・当事者間の信頼関係破綻の有無 など

「従前の経過」においては、賃貸人と賃借人の間の信頼関係が重要視されます。もし賃借人の家賃滞納や迷惑行為によって、当事者間の信頼関係が破綻していると認められた場合、立ち退き要求が認められる可能性は高くなります。

 

建物の利用状況

「建物の利用状況」も考慮されます。例えば、以下のような利用状況を評価します。

・賃借人が契約通りの用途で物件を使用しているか
・使用頻度はどれくらいか

賃借人が契約とは異なる用途で物件を使用していたりほとんど使用していなかったりする場合、この点での判断は賃貸人に有利になる可能性があります。

 

建物の現況

「建物の現況」とは、賃貸物件として使われている建物の現在の状況・状態のこと。この点では、以下の点から建物の状況を評価します。

・建物の経過年数・残存耐用年数はどれくらいか
・老朽化はどの程度進んでいるか
・大規模修繕の必要はあるか・費用はいくらかかるか
・その地域の標準的な使用形態に適しているか

入居者の身に危険が迫るほどの老朽化が確認された場合には、立ち退き要求が認められる可能性は高くなりますが、通常の老朽化であれば、それだけで賃貸人に有利になることはほとんどありません。

 

立ち退き料

最後に挙げるのが、「立ち退き料」です。

借地借家法第28条には、「財産上の給付」が「正当事由」の考慮要素となることが記載されています。
この「財産上の給付」とは、立ち退き料のこと。立ち退き料は、賃貸人の「正当事由」を補完するものとされています。

とはいえ、立ち退き料の支払いは法的に定められたものではなく、規定の計算方法も存在しません。
しかし立ち退き料は補償の意味を持つため、大家都合の立ち退きの際、立ち退き料が支払われるのが一般的です。

 

大家死亡に伴う立ち退き料の「相場」

大家の死亡を理由にした立ち退き要求は、「大家都合による立ち退き」に該当します。
大家都合による立ち退きでは、大家から入居者へ立ち退き料が支払われるのが一般的です。

ただしその相場は、先ほど記述した正当の事由や弁護士の手腕によって大きく変動します。
他のサイトではよく「立ち退き料の相場は家賃の6〜12ヶ月分程度」と表現されていますが、これはあくまで目安であり、立ち退き料の金額はケースバイケースです。

正当事由の判断はケースごとに大きく異なるため、それに伴い立ち退き料の金額も大きく変わります。中には、家賃の数年分を獲得できるケースもしばしばあります。

提示された立ち退き料が妥当なのかどうかを知りたい方は、エジソン法律事務所の立ち退き料獲得事例を御覧ください。

過去の事例から貴方に似たものを探し、どのくらいの立ち退き料を獲得したのか調べましょう。

もし「この立ち退き料は妥当なのかな?」と不安に思う方は、弊所でお調べいたします。まずはエジソン法律事務所のホームページをご覧ください。

 

 

円滑に立ち退き交渉を進めるには

立ち退き問題では、賃借人が適切な補償を受けること、賃借人にとってなるべく有利な条件で合意することが重要になります。これを実現するためには、立ち退き交渉をうまく進める必要があります。

立ち退き交渉をうまく進めるためには、「弁護士に依頼する」ことを検討するとともに、「交渉内容を書面で残す」ことも徹底しましょう。

 

弁護士に依頼する

立ち退き交渉をうまく進めるには、法律の知識や交渉の技術が必要です。しかし、賃借人が立ち退き交渉に慣れていることはほぼなく、必要な知識や技術を身につけていることも稀でしょう。

そこで検討すべきなのが、弁護士への依頼です。不動産問題を扱う弁護士は、立ち退きに関するノウハウに長けています。弁護士が賃借人に代わって代理交渉を行えば、立ち退き交渉がより有利な内容で円滑に進む可能性は高くなり立ち退き料増額も見込めます。

また、弁護士に手続きや交渉を依頼することで、賃借人の負担は軽減されます。賃貸人と直接顔を合わせて交渉する必要がない分、精神面での負担も軽くなるでしょう。

 

交渉内容を書面に残す

立ち退き交渉の経過や合意内容は、書面に残しておくことが大切です。口約束だけでなく客観的な記録を残しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができるためです。
交渉内容を書面に残すのが困難な場合は、ボイスレコーダーを利用しても良いでしょう。

また、交渉の最後には合意書を作成し、賃貸人・賃借人の双方が署名捺印することになりますが、署名捺印の前には合意書の内容をしっかり確認しておく必要があります。合意した内容と異なる内容が記されていないか、必要な内容は全て記載されているか確認しましょう。もし立ち退き料や条件に不満がある場合は決してサインをせず、弁護士事務所に「この条件は妥当でしょうか?」と問い合わせてみることをおすすめします。

 

 

立ち退きはエジソン法律事務所へ相談を

「不動産オーナーから契約を更新しない旨を通知された」「大家から立ち退きを打診された」など、賃貸人から立ち退きを求められた場合には、まずはエジソン法律事務所にご相談ください。賃借人が適切な補償を受けられるよう、弁護士が手厚くサポートします。

当事務所では、初回相談料・着手金無料の完全成功報酬型を採用しています。立ち退き料の支払いがなかった場合に報酬は発生しないので、費用面で不安がある方も安心してご依頼いただけます。

既にご紹介したとおり、立ち退き問題は交渉が重要です。賃借人の権利を守りより良い条件で合意するためにも、立ち退き問題はエジソン法律事務所にご依頼ください。

記事監修 : 代表弁護士 大達 一賢