コラム
ビル取り壊し・建て替え時の立ち退き料の「相場」は?増額交渉のコツも解説

ビルに店舗やオフィスを構えている場合、「老朽化したビルを取り壊して建て替える」という理由で立ち退きを求められることもあるでしょう。
ではビル取り壊し・建て替え時の立ち退きでは、入居者はどの程度の立ち退き料を受け取ることができるのでしょうか。
今回は、オフィス・店舗ビルからの立ち退きで発生する立ち退き料の相場について、実際の判例や増額のコツと併せて解説していきます。
ビルからの立ち退きを迫られたら確認すべきこと
現在使用しているオフィス・店舗のビルから立ち退きを求められた際には、まずはそもそもの契約内容や立ち退き請求の正当性を確認することが大切です。
具体的な確認のポイントは、次の2つです。
①普通借家契約・定期借家契約
立ち退きを求められた時には、締結している賃貸借契約が「普通借家契約なのか定期借家契約なのか」を確認する必要があります。
最も一般的な契約形式である普通借家契約とは、契約期間が満了となっても賃借人が望む限り契約が更新されていく形の契約のこと。正当事由が無ければ、賃貸人が一方的な都合で退去を求めることはできません。
一方の定期借家契約とは、あらかじめ契約期間が決められている形の契約のことです。契約期間が満了となれば、賃貸人との間で再契約を結ばない限り、賃借人はその物件から退去しなければなりません。
締結しているのが「通借家契約なのか定期借家契約なのか」によって、立ち退き請求を受けた時の対応は異なります。
普通借家契約の場合であれば、その立ち退きに正当事由(次章で詳しく説明します)がない限り、入居者は立ち退き請求に応じる必要はありません。また正当事由があって立ち退きに応じる場合でも、賃貸人から賃借人へ立ち退き料が支払われることが多いようです。
しかし定期借家契約の場合、期間満了時の退去は契約時に決まっていたことです。そのため賃貸人側が退去を求めるにあたって、正当事由が必要になることはありません。立ち退き料の支払いもないのが通常です。
②立ち退きの正当事由
普通借家契約の場合、貸主都合の立ち退きには正当事由が必要です。
借地借家法28条によると、正当事由は次の要素によって総合的に判断されます。
・賃貸人・賃借人それぞれの建物の使用を必要とする事情
・賃貸借に関する従前の経過
・建物の利用状況
・建物の現況
・財産上の給付(=立ち退き料の支払い)
例えば賃貸人側は、「老朽化している」「取り壊して建て替えたい」などの理由で立ち退きを求めることが多いです。
しかし、それだけで立ち退きの正当事由が判断されるわけではなく、賃借人の都合も考慮されます。例えば、
・ビルの近くに取引先がある
・近所にお得意様がいる
・地元に根づいてしまっている
上記のような会社・店舗の場合、引っ越すのは簡単ではありません。
賃借人側の立場を考えると、立ち退きの正当事由が不十分だと判断されることもあります。
ここで登場するのが、立ち退き料です。
双方の事情を鑑み、立ち退きの正当性が十分ではないと判断される場合、賃貸人は立ち退き料を支払うことで正当事由を補完することができます。
正当事由について、詳しくは「【賃貸の借主向け】立ち退きの正当事由を弁護士が徹底解説」にて解説しています。
ビルからの立ち退き料の相場
立ち退きの正当事由が不十分であると判断される場合、賃貸人から立ち退き料が支払われることがあります。
この立ち退き料の相場は一般的に賃料の数年分といわれていますが、実際の金額はケースバイケース。
ビルの老朽化の進行度や引越し費用、内装など、様々な考慮要素があるため、立ち退き料の相場を一概に述べることはできません。
しかし店舗やオフィスの立ち退きでは、一般的な住居からの立ち退き料よりも高額になる傾向があります。
また大手デベロッパー(三菱地所、住友不動産など)による立ち退きの場合、より踏み込んだ立ち退き料請求が可能なこともあります。
下記ホームページから詳しい状況を相談頂ければ、立ち退き料の概算をお伝えすることができます。まずはお気軽にご相談下さい。
エジソン法律事務所・立ち退き料増額ホームページ:https://edisonlaw.jp/tachinoki/
オフィス・店舗ビルの立ち退き料の内訳
オフィスビル・店舗から立ち退く場合の立ち退き料は、下記のような項目が考慮されることがあります。
・移転費用(引っ越し費用、新店舗・オフィスの内装工事費用など)
・新店舗・新オフィスの契約費用(敷金・礼金、保証料、仲介手数料など)
・新旧家賃差額(数カ月〜数年分の家賃差額)
・営業補償(移転に伴う休業期間の営業利益、固定費など)
・借家権価格 など
立ち退きに伴い店舗やオフィスビルを移転するためには、賃借人は移転費用や新テナントの契約費用を支払わなければなりません。これらの費用については、立ち退き料の補償対象になることがあります。
また、新旧家賃差額がどれだけの期間分支払われるかは、ケースによって異なります。何カ月・何年分の家賃差額を請求できるかは、立ち退き交渉のポイントの一つでしょう。
家賃差額の算定方法については、「立ち退き料として家賃の差額も請求できる| 算出手順も詳しく解説」にて詳しく解説しています。
またオフィス・店舗の立ち退きでは、一般住宅と異なり、営業補償が行われるのも特徴です。この項目では、移転に伴う休業中の営業利益はもちろん、光熱費や人件費などの固定費も対象となります。
ビルの立ち退き料の判例
ここでは、ビルの建て替えによる立ち退きにあたって、賃貸人に立ち退き料の支払いが命じられた判例をご紹介します。
新宿にあるビルで喫茶店を営むAは、賃貸人であるXに、老朽化による取り壊しと再開発を理由にした立ち退きを求められました。Aは立ち退きを拒み、Xはテナントの明渡訴訟を提起しました。
立ち退きに伴うAとXの事情(物件使用の必要性)は以下のとおりです。
【賃貸人X側の事情】
Xは対象ビルを取り壊し、道路を隔てたところにある別のビルとともに再開発を行うことを計画している
昭和46年に建築されたそのビルは相当程度老朽化が進んでいる
老朽化した対象ビルと対比して、周囲の土地の商業化は進んでいる
立ち退き要請により、テナントの95%程度が立ち退き済みで、空室率が高い状態である
【賃借人Aの事情】
Aは、対象ビル竣工時から飲食店および倉庫、控室として、ビル内の複数のテナントを長年利用してきた
長年同じ場所で営業してきたことで固定客がおり、メディアにも取り上げられたことがある
両者の事情を鑑みた結果、Xの計画の合理性や必要性が認められ、Aの建物使用の必要性を一定程度認めながらも、裁判所は「十分な金銭的補償(立ち退き料の支払い)が行われれば、Xの立ち退き要請には正当事由が認められる」と判断しました。
また、Aに支払われるべき適正な立ち退き料については、片方の店舗が5,120万円(借家権価格2,620万円、移転実費・営業損失2500万円)、片方の店舗が5,215万円(借家権価格2,715万円、移転実費・営業損失2500万円)としました。
この判決では、店舗やオフィスの立ち退きにおける立ち退き料には、借家権価格も大きく影響する可能性があることが分かります。
(参考:第59号 築後40年が経過したビルのテナントについて、立退料を支払うことと引き換えに建物明渡請求が認められた事例 – Westlaw Japan 判例・法令検索・判例データベース )
立ち退き料増額に向けた交渉のコツ
ビルの所有者から立ち退き請求を受けた場合、うまく交渉を進めることで立ち退き料を増額できる可能性があります。
そのためには、次のポイントを意識しましょう。
①オーナー側の利益を考慮する
立ち退き料の増額を目指すには、「ビルのオーナー側が得られる利益」を考慮する必要があります。
立ち退きに際して、多くの場合ビルのオーナーは、以下のような事情・思惑を持っています。
・ビルを取り壊して建て直し、長期的な視野で利益を得たい
・ビルを取り壊して更地にし、大手デベロッパーに売却したい など
取り壊すほどには老朽化していないにも関わらず立ち退きを迫られる場合は特に、上記のような事情が隠れているケースが少なくありません。
このような事情を抱えるオーナーは、最終的な利益を見越して立ち退き料を支払うことが多いです。
ここに立ち退き料を増額できる余地が生まれるでしょう。
例えば、ビルを取り壊し、その土地を大手デベロッパーに売却するという場合、その売却額は数千万から数億円に上ることもあります。
最終的に多額の利益を得られる場合、オーナー側が多少立ち退き料を増額してでも退去させたいと考えるのは自然でしょう。
したがって、オーナー側が提示した正当事由などから、オーナー側が得る利益をある程度算出できていれば、より踏み込んだ立ち退き料増額の交渉ができます。
エジソン法律事務所では大手デベロッパーとの交渉経験をもとに、相手方の得る利益の概算をある程度予測し、その予測を織り込んで立ち退き料を請求することがあります。そのためケースにもよりますが、依頼者の想定よりも多額の立ち退き料を得られることも少なくありません。
②裁判を盾に交渉する
テナント側からオーナー側に立ち退き料を提示する際には、「同意を得られない場合、訴訟も検討する」という姿勢を見せることが重要です。裁判に移行した時のリスクやコストを感じさせることで、オーナー側が多少の立ち退き料の増額を許容する可能性は少なくありません。
弊所に立ち退き料増額の依頼をされる方の中には、裁判に対して何となく「怖い」という印象を持っている方が多くいらっしゃいます。しかし弁護士から見れば、裁判は日常的に行うものであり、決して怖いものではありません。
むしろ、裁判は適正な立ち退き料を請求できる良い機会であると捉えています。
弁護士に請求を依頼すれば、立ち退き料の増額請求が裁判に発展した場合でも、依頼者の方が出頭する必要はありません。
とはいえ、一般の方からすると、裁判に対して不安感を持っていることは事実。それを手厚くサポートするのが弁護士の役割です。
裁判を盾により踏み込んだ立ち退き料を請求できる点は、弁護士に依頼する大きなメリットであると言えるでしょう。
ビルの立ち退き料の増額はエジソン法律事務所へ相談を
ビルの取り壊し・建て替えの際、立ち退き料の増額はエジソン法律事務所へご相談ください。立ち退き料は正当事由やオフィスの規模感によって大きく変わりますが、経験をもとにある程度の概算をお伝えすることもできます。
弊所は相談料無料・着手金0円の完全成功報酬制を採用しており、立ち退き料が発生しなければ成功報酬も発生しません。費用が心配な方も、安心してご依頼ください。
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記事監修 : 代表弁護士 大達 一賢