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建物の老朽化により定期借家契約に切り替えられた!?拒否する方法や正当事由について徹底解説

コラム/[更新日]2025年6月18日

建物の老朽化により定期借家契約に切り替えられた

賃貸物件に住んでいる方の多くは、貸主との間で普通借家契約を締結しています。

この普通借家契約では契約がほぼ自動的に更新され、居住者は安心して暮らすことができます。

ただし、個別の事情によっては、貸主が借主に対し、普通借家契約から定期借家契約への変更を求めることがあります。定期借家契約では、居住に期限が設けられ、借主は期限満了時に物件から退去しなければなりません。

では、貸主にこのような契約の切り替えを求められた場合、借主がそれを拒否することはできるのでしょうか。

今回は、賃貸物件における定期借家契約への切り替えと条件、拒否の可否について、わかりやすく解説します。

 

定期借家契約への切り替えを求められた!

賃貸物件では、貸主が借主に対し、普通借家契約(普通賃貸借)から定期借家契約(定期賃貸借)への切り替えを求めることがあります。具体的には、貸主側に以下のような事情があるケースが考えられます。

・3年後に建物を建て替えるため、現在の入居者との契約を3年の定期借家契約にしたい
・建物が老朽化しているため、定期借家契約の満了後に取り壊したい
・高齢で賃貸業を続けるのが厳しいため、定期借家契約にして、現在の入居者が退去した後に廃業したい

貸主側から建物の老朽化や取り壊しを理由に、定期借家契約へ変更したいと申し出る例は、少なくありません。
しかし、定期借家契約への切り替えは、契約満了にあたって新たな住居に転居しなければならない、立ち退き料が出ない可能性があるという点で、普通借家契約に比べ、借主にとって不利になるものです。したがって、貸主側にも事情があるとはいえ、切り替え要求を簡単に受け入れてはいけません。

定期借家契約への変更を求められた場合には、返答を保留して要求の正当性についてよく考え、場合によってはそれを拒否することも検討しましょう。

 

普通借家契約・定期借家契約とは

契約変更の条件や正当性について確認する前に、まずは普通借家契約と定期借家契約の特徴と違いをみていきましょう。

普通借家契約とは

普通借家契約は、もっとも一般的な賃貸借の契約形態です。
この契約では借主が解約を申し出ない限り、契約は自動で更新されていきます。借主が契約の更新を希望する以上、貸主はそれを拒否することは基本的にできません。
そのため、安定的に長く住み続けられる点が、借主にとっての大きなメリットです。

普通借家契約は、借主の権利保護に重きを置いた契約形態だといえるでしょう。

 

定期借家契約とは

定期借家契約は、あらかじめ契約期間が決まっており、契約が更新されることもない契約形態のことです。

契約の自動更新が無いというのが最も大きなポイントです。

期間満了後にも住み続けたい場合には、わざわざ再契約する必要があります。貸主が再契約に応じなければ、出ていく必要がある、ということになります。

例えば、5年の契約期間を設け定期借家契約を締結した場合、5年後の期間満了時に再契約の交渉を行い、貸主が応じなければその住宅を出ていく必要があります。

 

普通借家契約と定期借家契約の違い

普通借家契約と定期借家契約の大きな違いは、「借主の希望で契約が更新されるか否か」という点にあります。

普通借家契約の場合、借主が望む限り契約は更新されていくため、貸主の一方的な求めにより借主が物件から出ていかなければならなくなることは基本的にありません。この契約形態で貸主が借主を立ち退かせるためには、正当事由が必要になります。

一方、定期借家契約は貸主の都合によって契約期限があらかじめ決められています。そのため再契約をしない限り、契約満了になると借主は物件から出ていかなければならず、立ち退き料の支払いもありません。

つまり、定期借家契約は普通借家契約に比べ、「物件からの退去」という点で、借主にとって不利な面がある契約なのです。

 

 

定期借家契約への切り替えるための条件

契約形態を普通借家契約から定期借家契約に切り替えるためには、まず普通借家契約を解除し、あらためて定期借家契約を締結するという手続きが必要になります。

この時、貸主と借主が合意した場合には、スムーズに契約の切り替えができます。しかし、すでに述べた通り、借主の合意なしに、貸主が一方的に契約を解除することはできません。
ただし、借地借家法にもとづく次の条件を満たすことで、貸主による契約解除は認められる可能性があります。

・契約満了の1年〜6か月前までに、借主に更新拒絶の旨を通知すること
・更新拒絶の「正当の事由」を提示すること

「正当の事由」とは、契約の更新拒絶の正当性のことですが、これは「建物使用に関する貸主・借主双方の事情」や「実際の使用状況」、「建物の現況」、「貸主・借主間の賃貸借における従前の経過」などの要素をもとに、総合的に判断されます。

ただし実際は、貸主による更新拒絶の一般的な理由(建て替え、自己使用など)が、それだけで「正当の事由」と認められるケースは非常に少ないです。入居者を立ち退かせるに足る「正当の事由」を成立させるには、建て替えや自己使用などの事由に加え、借主への立ち退き料の支払いが行うのが通例です。

つまり、契約満了6か月前までの通知と更新拒絶理由の正当性がなければ、貸主都合で普通借家契約を解除することはできないのです。
このように、借主が合意しない限り、契約切り替えに伴う普通借家契約の解約は、簡単に行えるものではありません。

 

 

定期借家契約への切り替え要求は拒否できる?

貸主により普通借家契約から定期借家契約への切り替えを求められる際、拒否して居座り続けることができるのでしょうか。これに関しては、個々のケースによって大きく異なります。

もし貸主が「正当の事由」に値する条件を満たし、契約満了6か月前までの事前通知も行なっている場合には、法的に普通借家契約の解除が認められる可能性があります。

(最終的に正式な正当事由を判断するのは裁判所ですので、極論を言うと裁判の中で立ち退きの正当事由が認められるまで、立ち退きを拒否して居座ることはできますが、そうなる前にお早めに弁護士に相談いただくことをお勧めします。)

老朽化を理由とする定期借家契約への切り替えを要求された際には、貸主側の正当の事由を確認し、弁護士へ相談の後、拒否できるかどうか判断してもらうことをお勧めします。
場合によっては立ち退きを受け入れ、立ち退き料の増額を目指すことも検討しましょう。

 

 

立ち退き料の交渉の流れ

貸主から普通借家契約の解除(更新拒絶)を求められた場合、要求を拒否するにしても、受け入れるにしても、交渉は非常に重要です。交渉により、立ち退き料をはじめとした契約解除に伴う条件は変わってくるためです。

ここでは、交渉の具体的な流れをみていきましょう。

 

契約更新拒絶の通知

まずは、貸主から契約の更新拒絶の通知が届きます。
この通知には、更新拒絶の理由や退去時期などが記載されているので、よく確認するようにしましょう。また、記載されている理由が「正当の事由」に該当するか、明け渡し日まで1年〜6か月前の猶予があるかについても確認する必要があります。

更新拒絶に対する返答は保留にし通知書や賃貸借契約書を見ながら、対応を検討するようにしましょう。

 

立ち退き料の計算

立ち退き料の金額によっては、更新拒絶を受け入れても良いと考えている場合には、請求する立ち退き料の計算を行います。
立ち退き料には、引越し費用や新居の契約費用、新旧家賃差額、迷惑料などが含まれます。これらの項目については、その地域の相場をもとに算出し、合算して、妥当な立ち退き料の金額を算出しましょう。

ただし、前述の「正当の事由」の該当性の判断や立ち退き料の計算、その後の交渉などをうまく進めるには、法的な知識や経験が必要です。これらの手続きは弁護士に依頼した方が良いでしょう。

 

交渉

準備ができたら、貸主との交渉に入ります。
交渉では、更新拒絶・契約解除に関する細かな条件について協議していきます。貸主の要求を拒否する場合には、その旨を明確に伝えましょう。

交渉で特に重要なのが、立ち退き料の交渉です。計算の根拠を示しながら、希望する立ち退き料についてしっかり主張を行いましょう。

条件に双方が合意した場合には、合意内容を記載した合意書を作成し、署名捺印を行なって、交渉は終了です。あとは、合意内容に沿って契約解除、立ち退き料の支払いが行われます。

 

裁判

交渉で合意できなかった場合には、貸主側が訴訟を提起し、裁判になることもあります。

裁判では、貸主の更新拒絶に「正当の事由」が認められるかどうかが争点になると考えられます。そのため、借主が自身の物件使用の必要性をしっかり主張することが重要です。

裁判は、基本的に1か月に1回のペースで開かれ、複数回の審理を経て、判決へと進みます。判決までには時間がかかるため、当事者の負担が大きくなりやすい点には、注意が必要です。

判決が出た後には、判決の内容に沿って対応を行います。

 

 

立ち退き料の交渉は弁護士に依頼を

貸主に定期借家契約への切り替えを求められたり、立ち退きを要求されたりした場合には、弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士が間に入ることで、借主は以下のメリットを得ることができます。

・貸主側の態度が軟化する可能性がある
・より高額の立ち退き料を期待できる
・諸々の手続きや交渉、裁判を代理してもらうことで負担を軽減できる

弁護士に交渉を依頼することで、貸主が主張する「正当の事由」を精査し、適切な金額の立ち退き料を交渉できます。面倒な手続きも代理で行ってもらえるため、借主は自身の負担を軽減することができるでしょう。

エジソン法律事務所では、立ち退き問題の対応をお引き受けしています。実績豊富な弁護士が交渉を代行し、立ち退き料の増額を目指します。

当事務所は相談料0円・着手金0円の完全成功報酬制ですので、立ち退き料が出なければ弁護士費用は一切発生しません。

 

「提示されている金額が妥当か分からない」などご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

 

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記事監修 : 代表弁護士 大達 一賢