コラム
区画整理による立ち退きは拒否できる?費用・流れ・行うべきことを解説

土地区画整理事業は、まちづくりの一環で行政が行う事業のひとつです。この事業の実施される際、対象地域の地権者は、住んでいる土地・建物からの立ち退きを求められる可能性があります。
では、区画整理によって行政から立ち退きを求められた場合、地権者がその要求を拒否することは可能なのでしょうか。
今回は、区画整理による立ち退きについて、拒否の可否や一連の流れ、必ず行うべきことなどについて、わかりやすく解説します。
区画整理により立ち退きを求められることがある
土地区画整理事業とは、対象の土地に公共施設を整備し、土地の区画形質を変更して、その土地の利便性を高める公共事業のことを指します。具体的には公園や道路の新設、いびつな土地の区画を整える事業であり、これは宅地の利用価値向上に効果的です。
区画整理は行政による事業であり、その内容は土地区画整理法によって定められています。
新たな街の価値を創出できる区画整理ですが、その実施にあたっては、行政が対象の土地の地権者に立ち退きを求めるケースがあります。もともとその場所に土地や家を持っていた地権者は、この要求に対応しなければなりません。
またケースによっては、立ち退きではなく、既存の土地の減歩(宅地面積を減らすこと)を求められることもあります。
区画整理による立ち退きは拒否できるのか
区画整理に伴う立ち退き要求を、拒否し続けることは困難です。なぜなら、行政が行う区画整理事業には、法的な強制力が認められているためです。
この強制力の根拠となるのが、都市計画法および土地収用法です。これらの法律では、「区画整理をはじめとした公共の利益となる事業では、その土地を収用・使用することができる」旨が定められています。
よって、例え地権者が立ち退き要求を拒否し続けたとしても、最終的に行政は、土地収用を強制執行することができるのです。
もちろん、強制執行は立ち退き要求後すぐに行われるわけではありません。行政側も、可能な限り地権者が納得いく形での立ち退きを目指すでしょう。
このことから、区画整理による立ち退きにあたっては、頑なに立ち退きを拒否するのではなく、より良い条件で立ち退くための対話を行うことが重要だと考えられます。
区画整理の立ち退きにかかる費用
区画整理事業による立ち退きでは、地権者側が負担する費用は原則ありません。転居先や新しい建物の建築など、手続きにはかなりの手間が必要にはなるものの、基本的には退去者に経済的な負担はかかりません。
立ち退きに際して発生する次のような費用については、行政側が全額負担することがあります。
・新しい土地を用意するための費用
・新しく建物を建築・移転する費用
・既存の建物の解体費用
・引越し費用
・建物の建築中に一時的に住むための賃貸住宅の費用 など
ただし、新しく建物を建築する費用にあたっては、「立ち退く建物の建築に費やした金額」しか補償されません。新しく建築する建物のグレードを、立ち退く建物よりも上げたいと考えていても、行政からは立ち退く建物以上の費用は支払われないので注意しましょう。
区画整理の立ち退きの流れ
区画整理による地権者の立ち退きは、次のような流れで進められます。
1, 住民説明会の実施
2, 立ち退き通知書の送付
3, 立ち退き交渉の実施
4, 合意・契約締結
5, 退去・立ち退き料の支払い
上記5つの手順について、詳しくみていきましょう。
1.住民説明会の実施
区画整理事業の実施にあたっては、まず対象地域の地権者を対象とした住民説明会が実施されます。
地権者に大きな影響を与える区画整理は、行政の独断ではなく、地権者の同意のもとで進めていく必要があります。よって、区画整理の計画を地権者に周知し理解・同意を得るため、事業実施の前には住民説明会が開かれるのが一般的です。
この説明会では、事業の計画が開示されるほか、地権者からの質疑応答も行われます。
また、説明会の後には、土地区画整理組合の設立が行われます。この組合については、対象地域の土地の所有者または借地権者のうち7人以上が発起人になる必要があります。
さらに、所有者および借地権者の3分の2以上の事業計画に対する同意も必要です。
組合が設立されれば、同意した所有者・借地権者はもちろん、反対した所有者・借地権者も組合員とされ、組合は事業推進に向け運営されていきます。
2.立ち退き通知書の送付
住民説明会後には、各地権者に対し、行政から立ち退き通知書が送付されます。
この通知書には、立ち退きの期限や立ち退き料の金額など、立ち退きにあたっての諸々の条件が記載されているはずです。通知書を受け取ったら、その内容をよく確認し、納得できる条件が提示されているかどうかの見極めを行いましょう。
立ち退きを求められる地権者は、「この通知書の内容で必ず合意しなければならない」という訳ではありません。立ち退き条件については、その後の交渉で行政側に希望を伝えることができます。
そのため、通知書の条件はすぐに承諾せず一旦保留にし、交渉に向け、自分の求める条件を洗い出す作業を行いましょう。
3.立ち退き交渉
立ち退き交渉では、行政側の担当者から立ち退き条件に関する詳しい説明を受けるとともに、自分が求める条件も伝えましょう。立ち退き料の増額を求める場合には、根拠となる費用の相場などを明確に提示できるようにしておくと、交渉がスムーズに進む可能性は高くなります。
前述のとおり、区画整理による立ち退きを拒否し続けることは基本的にできません。大切なのは、より良い条件で立ち退くことであると考えられます。
そのために、この交渉は重要な役割を果たすものです。交渉を成功に導くためには、法的知識と高い交渉力を持つ弁護士に代理交渉を依頼するのも、ひとつの方法でしょう。
4.合意・契約締結
交渉を重ね、双方が条件に合意したら、契約締結(合意書の作成)に入ります。立ち退き条件を詳細に記載した合意書を作り、記名・捺印を行いましょう。
合意書の作成は行政側が行うことが多いですが、記名前にはその内容をよく読み、合意内容と異なる部分がないか確認することが大切です。合意書を確認することなく、記名してしまうことのないよう気をつけてください。
契約が完了したら、立ち退き交渉は終了です。
5.退去・立ち退き料の支払い
交渉・契約が終わったら、決められた期日までに対象の土地からの退去を行います。一時的に住む住宅探しはもちろん、既存の建物の取り壊しや移転に伴う手続きも進めていきましょう。
また、行政からの立ち退き料は、土地の引き渡しが完了してから支払われるのが一般的です。しかし、住んでいた土地からの退去には大きな費用がかかり、この費用負担が厳しいという方は少なくないでしょう。
そのような場合には、交渉時に行政の担当者に対し、立ち退き料を一部先払いして頂けないか、掛け合ってみてください。先払いが認められ、一時的な費用負担を回避できる可能性があります。
区画整理の立ち退きで行うべきこと
区画整理による立ち退きでは、有利な条件で立ち退くためにも、必ず次の行動を取るようにしましょう。
・住民説明会への参加
・行政との交渉
・弁護士への相談
最後に、上記3つの取るべき行動について解説していきます。
住民説明会への参加
区画整理に伴う住民説明会は、多くの場合、数回にわたって行われます。参加はあくまで任意ですが、区画整理の計画や必要性に対する理解を深めるためにも、また自身の持つ疑問や不安を解消するためにも、この説明会にはできるだけ参加した方が良いでしょう。
説明会では、行政が地権者による質疑応答にも対応します。聞きたいことがある場合には、事前にその内容をまとめておき、当日に質問を行うようにしてください。
区画整理にあたっては、もともと自分が持っていた土地や建物から強制的な退去させられることに不満を覚える方もいるでしょう。しかし、区画整理の不満や不安については、説明会の中での冷静な対話で解決を目指すことが大切です。
行政との交渉
区画整理による立ち退きでは、行政との交渉も必ず行うべきです。行政が提示した条件をすぐに受け入れるのではなく、自分の求める条件を提示し、より良い補償を受けるための話し合いを行いましょう。
より良い補償を受けるための交渉では、「立ち退くかどうかは条件次第であるという姿勢を示すこと」や「その土地と建物の重要性を主張すること」、「立ち退きによって大きな損害が発生することを主張すること」などが効果的です。これらの主張にあたっては、具体的な数字(駅からの近さや予想される損失額など)を示せると、その説得力はより高いものになるでしょう。
そしてそのためには、事前準備も重要です。行政との交渉に臨む前には、希望の条件をまとめ、またその根拠となる情報もよく調べ、論理的な主張ができるようにしておきましょう。
弁護士への相談
立ち退き交渉をうまく進めるには、高い交渉力が必要です。法的知識や相場の把握も求められるでしょう。また、交渉を自ら行うことは、地権者の負担にもつながります。
これらの問題は、弁護士の手を借りることで解決することが可能です。
弁護士は、行政側が提示した条件の妥当性を見極めるとともに、地権者の希望を踏まえて、代理交渉を行うことができます。不動産に関する問題を取り扱った実績が多い弁護士であれば、その経験を生かし、より良い補償の獲得を目指すこともできるでしょう。
さらに、交渉にあたっての地権者の負担も軽減することが可能です。
より良い補償のため、また負担軽減のためにも、区画整理に伴う立ち退きは、弁護士への相談を検討しましょう。
まとめ
公共事業である区画整理の立ち退きは、拒否し続けることが極めて困難です。それは強制的な土地収用が法律で認められているためです。
所有し住んでいる土地や建物に愛着がある方は多いでしょう。しかしこの場合には、「立ち退きを拒否し続けること」よりも「より良い補償を受けること」が重要であると考えられます。
立ち退きにあたってより良い補償を得るためには、弁護士による代理交渉をご検討ください。
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記事監修 : 代表弁護士 大達 一賢