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賃貸物件の大家から「更新しない」と言われた場合の立ち退き料等を解説

コラム/[更新日]2025年7月28日

賃貸物件の大家から「更新しない」と言われた場合の立ち退き料等を解説

賃貸物件を借りる際には、賃貸人(大家)と賃借人(入居者)は、賃貸借契約を交わします。
この契約にはいくつかの種類がありますが、もっとも一般的な普通賃貸借契約の場合、入居者が希望すれば、基本的に契約は更新となります。

では、賃貸借契約において貸主である大家側から更新を拒絶された場合、どうすればよいのでしょうか。その際には立ち退き料が支払われるのでしょうか。

今回は、賃貸借契約における大家からの更新拒絶と立ち退き料の支払いについて詳しく解説します。

 

原則貸主から一方的に賃貸借契約の更新拒絶はできない

賃貸物件の貸し借りにあたって、貸主と借主との間で結ばれる契約を、賃貸借契約と呼びます。

この契約の中でもっとも一般的な普通賃貸借(借家)契約の場合、「大家から一方的に契約の更新を拒絶して解除する」というのは原則として認められていません。
なぜなら、法律では、立場が弱くなりやすい借主(入居者)の権利が強く保護されているからです。もし大家の一方的な更新拒絶が可能になれば、入居者が安心して賃貸物件に住むことはできないでしょう。

入居者が希望する場合、賃貸借契約は基本的に更新となります。

 

大家が更新を拒絶できるケースは?

大家が入居者に対して更新を拒絶するためには、次の条件を満たす必要があります。

・契約期間満了の1年前〜6ヶ月前までに、入居者に対して更新拒絶の旨を通知すること
・更新拒絶の正当事由を提示すること

法律では、「契約期間満了の1年前〜6ヶ月前までに入居者に更新拒絶通知を行なわない場合、契約はそれまでの内容で更新される」ことになっています。これが、「法定更新」です。
法定更新は入居者を守るためのルールですが、裏を返せば、契約期間満了の1年前〜6ヶ月前までに大家が入居者に通知を行えば、更新を拒絶できる可能性があるということになります。

ただし、法律で定められた期間内に通知を行うだけで、大家は更新を拒絶できるわけではありません。更新拒絶、つまり立ち退き要請にあたっては、正当事由が必要になります。
正当事由がない場合、大家の立ち退き要請は認められず、入居者が退去する必要もありません。

 

貸主からの更新拒絶が認められる正当事由

先に述べた正当事由とは、物件や土地の貸し借りについて定めた借地借家法第28条に規定されているものです。この法律には、「建物の賃貸人による更新拒絶は、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない」ことが記されています。

この正当事由とは、「必要性の高い立ち退き(更新拒絶)理由」のことです。加えて「建物利用の必要性」や「建物の利用状況・現況」も、その考慮要素となります。
これらの要素を勘案して、立ち退き理由に高い必要性がない場合、正当事由は認められず、大家は更新拒絶を行うこともできません。

ただし、立ち退き理由が正当事由として弱い場合、入居者に立ち退き料を支払えば、大家は立ち退き理由を補完し、正当事由を成立させることができます。
つまり、大家が更新を拒絶して入居者に立ち退きを求めるためには、正当事由と、場合によっては「立ち退き料の支払い」が必要になるのです。
正当事由については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
【賃貸の借主向け】立ち退きの正当事由を詳しく解説

 

正当事由があっても立ち退き料はもらえる可能性がある

更新拒絶・立ち退きにあたって大家が正当事由を主張していても、入居者は立ち退き料をもらえる可能性があります。

立ち退き料は正当事由を補完するから

前述のとおり、「立ち退き料の支払い」は正当事由を補完します。大家側に完璧な正当事由があれば、補完は必要なく、立ち退き料は支払われません。

しかし、大家側の主張がそれだけで正当事由であると認められることは稀です。そもそも借地借家法は賃借人の権利に重きを置いており、正当事由の認否に関しては「入居者の建物利用の必要性」も勘案されます。多くの場合において、大家側の主張を正当事由とするためには、立ち退き料の支払いによる理由の補完が必要になります。

 

貸主としては立ち退き料を支払う方が合理的だから

立ち退き料の支払いは、入居者への補償の意味合いも持ちます。この金銭的補償があるかないかで、入居者の気持ちや態度は大きく変わるでしょう。適切な立ち退き料を支払うことで、立ち退きがスムーズに進む可能性は、大いに考えられます。

もし立ち退き料を支払わずに入居者に立ち退きを要請するとなれば、立ち退きを拒否する入居者も出てくるかもしれません。このトラブルが裁判にまで発展すれば、大家は時間もコストも負うことになります。

つまり、トラブルを避け、入居者に納得感を持ってスムーズに立ち退いてもらうためには、立ち退き料の支払いが合理的な手段なのです。
そのため、正当事由を有する場合であっても、大家が入居者に立ち退き料を支払う例は少なくありません。

 

立ち退き料は、どのくらいもらえるのか

では、大家からの更新拒絶による立ち退きでは、入居者はどのくらいの金額の立ち退き料を受け取れるのでしょうか。

結論から述べると、受け取れる立ち退き料の金額はケースバイケースです。
ご説明したとおり、立ち退き料は正当事由を補完します。よって、大家が主張する理由の正当事由としての強弱によって、立ち退き料の金額も次のように変わります。

大家の主張する理由が正当事由として弱い→立ち退き料の金額が上がる
大家の主張する理由が正当事由として強い→立ち退き料の金額が下がる

 

立ち退き料の相場

よく他サイトでは、支払われる立ち退き料の相場は「家賃の6〜12ヶ月分程度」と紹介されていますが、これは誤りです。
立ち退き料はケースによって算出項目が異なり、合計金額も変わります。立ち退き料が家賃の数年分請求できるケースも、数ヶ月分にとどまるケースもあります。

 

例として、下記にてエジソン法律事務所で対応した立ち退きの事例をご紹介します。

賃料10万円のマンションから「老朽化」を理由にした立ち退き→200万円の立ち退き料を獲得

家賃5万円のアパートからの立ち退き→立ち退き料120万円+フリーレントを獲得

家賃20万円のマンションから立ち退き→立ち退き料300万円の増額に成功

(その他の事例はこちら)

このように、立ち退き料は交渉技術やケースによって大きく変動します。一定の相場はありません。

 

「大家から更新しないと言われた」注意が必要なケース

大家から「次の更新をしない」旨を通知された場合、契約内容によっては、入居者が何の補償も受けられないまま更新拒絶・立ち退きを受け入れなければならないことがあります。
ここからは、注意すべき具体的な2つのケースについてみていきましょう。

 

ケース1 定期借家契約

定期借家契約とは、期間満了時に更新しない旨を定めた契約のことです。
普通賃貸借契約における更新拒絶と異なり、定期借家契約では、契約を更新しないことにあらかじめ入居者が合意しています。そのため、定期借家契約における期間満了の立ち退きには、正当事由も「立ち退き料の支払い」も要りません。
入居者は補償なしに、建物から退去することになります。
期間満了時の退去を避けたいのであれば、この契約方式は避けるべきでしょう。

ただし定期借家契約では、大家と入居者が合意さえすれば、再契約を行うことは可能です。期間満了時に立ち退きたくない場合、入居者は大家への再契約の交渉を行うという手段があります。

もし「定期借家契約に切り替えないか」と大家から持ちかけられた場合、下記の記事を参考にしてください。

建物の老朽化により定期借家契約に切り替えられた!?拒否する方法や正当事由について徹底解説

 

ケース2 大家からの一方的な更新拒絶が認められる契約になっているケース

賃貸借契約の中には、大家からの一方的な更新拒絶を認める内容が含まれているものもあるようです。契約書に「契約期間満了の半年前までに賃貸人が更新拒絶通知を行った場合、賃借人は契約の更新を主張できない」という内容が記載されている場合です。

しかし、最初にご紹介したとおり、正当事由なしに、賃貸人から一方的に賃貸借契約の更新を拒絶することは認められていません。いくら契約書に記載があっても、優先されるのは法律です。

また、借地借家法第30条では「建物の賃借人に不利な条件は無効とする」ことが定められています。この法律を根拠に、大家からの一方的な更新拒絶を認める契約は無効となるでしょう。

 

 

貸主から更新しないと言われたら、どうすればいいか?

物件の貸主である大家から更新しない旨を通知された場合には、入居者は次の対応を検討しましょう。

 

どのような立場で交渉に臨むか整理する

賃貸借契約を更新しないということは、入居者がその部屋から立ち退くということを意味します。立ち退きにあたっては、大家と入居者の間で、条件を詰めるための立ち退き交渉が行われます。

この交渉に臨むためにも、まずは自身がどのような立場でどのような条件を希望するのか、冷静に整理しましょう。例えば、「部屋から退去したくないため立ち退きを拒否する」「立ち退いても良いので十分な立ち退き料を受け取りたい」などです。

どの場合であっても、立ち退きの承諾については一旦保留するようにしましょう。保留することで、交渉においてより良い条件を引き出せる可能性があるためです。

 

弁護士に相談する

大家に契約の更新拒絶を通知された場合には、弁護士に相談するのもひとつの方法です。弁護士に相談すれば、「その更新拒絶が合法なのか」「立ち退き料は受け取れるのか」などといった疑問や不安を速やかに解消するとともに、取るべき対応の助言を受けることができます。

また、弁護士には交渉の代理を依頼することも可能です。代理交渉を弁護士が行えば、正当事由の強弱を的確に判断し、然るべき金額の立ち退き料を大家に請求することが可能になります。
立ち退きを拒否する場合にも、弁護士の存在は大きな力になるでしょう。

ただし、立ち退きについて相談する際には、不動産問題を得意分野とする弁護士を選択すべきです。不動産問題の実績が多い弁護士であれば、より有益なアドバイスや有利な交渉を期待できるでしょう。

 

 

まとめ

エジソン法律事務所では借主向けに、立ち退き料の増額交渉を代理で承っております。

初期費用0円、完全成功報酬型で受け付けておりますので、もし立ち退き料が支払われなければ費用は発生しません。

(詳しい弁護士費用はこちら)

 

一般的な賃貸借契約において、大家が一方的に契約更新を拒絶することは、基本的にできません。
それが可能になるのは、更新しない正当事由を有し、契約期間満了の1年前〜6ヶ月前までに通知を行った場合のみです。正当事由を成立させるためには、立ち退き料の支払いが必要になることも多いです。

大家からの更新拒絶に対して適切な対応を行うためには、入居者は弁護士に相談することを検討してください。弁護士のサポートを受ければ、入居者はより有利な条件で、問題を速やかに解決することができるでしょう。

 

 

記事監修 : 代表弁護士 大達 一賢